No.030 金銭債務の分割

 判例(民法)では、被相続人の銀行借入金などの金銭債務、相続開始と同時に各相続人の相続分に応じて当然に分割されることとなっております。しかし、相続の実務では、遺産分割協議書上で例えば相続分を超えて「銀行借入金の1億円を相続人甲が負担するものとする。」という合意をすることがあります。これは、相続分を超える債務に関しての「債務引受契約」の成立と考えられ、相続分相当のみならずそれを越える部分の債務を引き受けたとみられます。

 しかし、この債務の引き受けは相続人間のみで有効であり、銀行など第三者である債権者には対抗することはできません。したがって、最終的にこのような遺産分割協議の内容を実現するためには、債権者の同意を得た上で、債務者名義の変更を行うことになります。

 相続税法上は、このような相続実務を前提に、相続人間で合意した債務については、その負担した債務を債務控除の対象としております。

 なお、遺産分割で債務の分割をした結果、債務を負担した相続人の課税価格が次のようにマイナスになったとしても、そのマイナス分(相続人甲)を他の相続人(相続人乙)の課税価格から控除することは認められません。したがって、この例で相続人甲の▲2,000万円は相続人乙の課税価格7,000万円と相殺することはできず、課税価格7,000万円として相続税の総額を計算することになります。

区  分相続人甲相続人乙合  計
分割による取得財産8,000万円8,000万円1億6,000万円
債 務 の 負 担 額▲1億円▲1,000万円▲1億1,000万円
課  税  価  額▲2,000万円7,000万円7,000万円